刃物のルーツ 鉄はどこから
鉄利用の始まりについては、まだ確かな史料はないものの、隕鉄と還元鉄の2つの説があります。 |
人類が最初に出会った鉄と思われる韻鉄について
左は人類が最初に出会った鉄と思われる韻鉄です。 実際に火床に入れ打ち刃物を鍛えるように叩いてみましたので表面は黒く酸化しています。手前が磨いた部分です。 韻鉄は、メインとなる鉄・ニッケルの合金と少量の鉱物で構成されています。 ほとんどの鉄隕石は、重さで言うと5~15%のニッケルを含みます。 地球上ではこのような鉄・ニッケル合金の鉱物は発見されておりません。 超高温から冷却される過程において、内部編成が2つの鉱物による合金へと変化します。 それがウッドマンステッテン構造と呼ばれる内部構造で、705℃以上からゆっくりと冷却されると形成され、ほとんどの鉄隕石に見られます。 ちなみに、宇宙空間の真空状態では1度温度が下がるのに百万年もかかるそうです。 |
隕鉄で造られた日本刀
明治二十三年(1890)富山県(旧白萩村地内)において発見された白萩隕鉄。 当時、農商務大臣の榎本武揚がこれを知り、購入、その後、刀工の岡吉国宗に依頼、長刀2振、短刀3振、合計5振の刀を製作、 長刀1振を時の皇太子(後の大正天皇)に献上。長刀1振、短刀1振は行方不明、現在長刀1振、短刀2振のみ現存。 これらは流星刀と名づけられている。これはその一つの短刀で富山市科学文化センター所蔵。 榎本武揚から依頼され流星刀を作った刀匠の報告書には出雲の玉鋼:隕鉄=3:7(鋼部部分)、 地金は全部隕鉄と記されていますが多分和鉄を混ぜていると思われます |
鉄の種類 一口に鉄と言っても、別け方によって色々な種類に別けられます。硬度によって分類すると、軟らかい順に軟鉄(炭素量が0.5%位まで)、 鋼(0.8%~1.2%位)、鋳物(それ以上)。炭素量が0.1%単位異なるだけでその性質が全く変わってしまいます。時代的に別けると、和鉄(明 治初期以前に砂鉄からタタラにて作られた鉄を指します)、錬鉄(和鉄と同時代に岩鉄から低温で作られ日本に輸入さた洋鉄を指しま す)。現在鉄は明治以降高温度の高炉で作られた鉄を指します。刃物になる鋼の種類としては炭素鋼(鉄と炭素に多少の燐・硫黄・珪素 などの不純物か混じります)、特殊鋼(前記炭素鋼にクロム・タングステンが・モリブデン添加されています、錆の出難いステンレス鋼もこの種類に 入ります) |
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古鉄の比較 |
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江戸時代後期の土蔵窓の組格子 和鉄 大きさは80cm角の大きさ |
左と同じ土蔵に使われていた皆折金具 錬鉄 長さは約35cml両方の立ち上がりは8cm |
火花テスト |
火花テスト |
薬品テスト |
鍛え・延ばし① |
鍛え・延ばし |
鍛え・延ばし② |
磨き |
磨き |
日本の打ち刃物の特徴 |
欧米の刃物と日本の刃物 |
鍛造の効果 |
焼き入れ/ 欧米は油 日本は水 |
①鍛接の種類 |
左/両刃 庖丁(菜切)、肥後守、他
中/片刃 庖丁(出刃、柳刃、薄刃) 、裁ち鋏、鎌、他 右/片刃 切り出し、彫刻刀、繰り小刀、他 注)切り出し、鉈、蕎麦庖丁などは両刃も片刃もあります |
②鍛接・鍛造・形成・工程 中割り込みの菜切庖丁の場合 |
②-1 鋼を割り込んだ状態
軟鉄を裂いて鋼を割り込んだ状態。厚みも1cm以上あります。鋼を割込でいない左側は柄を付ける中子になります。 |
②-1 鋼を割り込んだ状態
軟鉄を裂いて鋼を割り込んだ状態。厚みも1cm以上あります。鋼を割込でいない左側は柄を付ける中子になります。 |
②-3完成
②-1に比較して長さで2倍、幅で3倍、厚みは2.5mm位で1/5程度になっております。 この後削って形を整え熱処理・研ぎ・仕上げ・柄付けなどの作業があります。 |
打ち刃物をうまく使いこなすポイント
日本刀作りの技法を受け継ぐ、日本の打ち刃物、錆が出て扱いにくいと思われている方も多くおられます。錆を例にとると、 ステンレス系の刃物も錆が出にくいだけで、手入れが悪いと錆は出ます。その錆は見た目にはわかりにくく、悪性のガンの ようにどんどん中に侵食していきます。 逆に打ち刃物の錆は変色しますので一目瞭然にわかり、打ち刃物はに叩いて鍛 えているので中に侵食しにくく研ぐと綺麗になります。錆がでるという前提で使用後手入れしながら愛着を持って長くご使用 いただくのが打ち刃物をうまく使いこなしていただくポイントかと思います。